【お金】年金の繰り上げ受給について

FP・暮らしとお金

年金の繰り上げを考える前に知っておきたい制度のポイント

はじめに

こんにちは、小島一浩です。

前回のブログでは、「繰り上げ・繰り下げはどちらがお得か」というテーマでお話ししました。

年金の繰り上げや繰り下げには、前回もお話ししたようにメリット・デメリットがあります。

繰り上げの場合は、繰り下げの場合と比べて、デメリットがあったとしても「今必要だから繰り上げる」という選択になることが多いのではないかと思います。

そこで今回は、繰り上げについてのメリット・デメリットをあらためて比べるのではなく、「繰り上げ」という制度そのものについて、基本的な整理をしておきたいと思います。

前回のブログの内容と一部重なるところもありますが、繰り上げの制度をしっかりと見ていきたいと思います。


年金の繰り上げはどんな制度か

まずは、「繰り上げ」という制度そのものを、ざっくり押さえておきます。

老齢基礎年金や老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることになっています。
この受け取り開始年齢を、65歳よりも前に早めることを「繰り上げ」と呼びます。

繰り上げができるのは、通常は60歳からです。
60歳以降であれば、自分で希望する月から受け取りを早めることができます。


繰り上げは「基礎」と「厚生」を同時にする必要がある

年金の「繰り上げ」には、もう一つ大事なポイントがあります。

それは、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を、同時に繰り上げなければならないという決まりがあることです。

ここが、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々のタイミングで繠り下げることができる「繰り下げ」とは、大きく違う点になります。

「老齢基礎年金だけ先に繰り上げて、老齢厚生年金は65歳からにする」といった選び方はできず、繰り上げを選ぶときは、両方まとめて前倒しする形になります。


一度繰り上げると、一生減額のままになる

もう一つ、繰り上げを考えるうえでとても大切なのが、「一度繰り上げをすると、その減額が一生続く」という点です。

繰り上げをすると、受け取りを早めた分だけ、毎月の年金額は少なくなります。

そして、その少なくなった年金額は、途中で「やっぱりやめたい」と思っても、原則として65歳からの本来の金額には戻すことができません。

老齢基礎年金も老齢厚生年金も、どちらも「繰り上げた分だけ、一生にわたって少ないまま受け取る」ことになります。

繰り上げは、「いったん選んだあとで、簡単には元に戻せない」という意味で、制度としても重たい選択肢だということを、まずは押さえておきたいところです。


60歳から繰り上げた場合の具体例

65歳から、老齢基礎年金が5万円、老齢厚生年金が10万円、合計15万円を受給できる予定の人が、60歳から受給を5年(60か月)繰り上げて受け取るとした場合で、具体的に計算してみます。

年金の繰り上げによる減額率は、1か月あたり0.4%です。60か月分繰り上げると、

0.4% × 60か月 = 24%

となり、65歳からの本来の年金額に比べて24%減額されることになります。

まず、老齢基礎年金5万円については、

5万円 ×(1 − 0.24)= 5万円 × 0.76 = 3万8千円

次に、老齢厚生年金10万円については、

10万円 ×(1 − 0.24)= 10万円 × 0.76 = 7万6千円

となります。

その結果、

  • 基礎年金:5万円 → 3万8千円
  • 厚生年金:10万円 → 7万6千円
  • 合計:15万円 → 11万4千円

となります。
そして、この人の場合、11万4千円という支給額が一生続くことになります(物価や賃金の動きに応じた見直しによる増減はここでは考えないものとします)。


繰り上げを考えるときのその他の注意点

ここまでお伝えしたことに加えて、繰り上げを考えるときに知っておきたい注意点を、三つに分けて整理しておきます。

① 障害基礎年金との関係
老齢基礎年金を繰り上げ請求したあとには、原則として障害基礎年金の請求ができなくなります。

将来、もし障害状態になった場合に受け取れる可能性のあった年金が、繰り上げによって選べなくなる点は押さえておく必要があります。

② 寡婦年金との関係
国民年金の第1号被保険者として保険料を納めていた夫が、老齢基礎年金を受け取らないまま死亡した場合に、一定の要件を満たす妻が60歳から65歳になるまで受け取ることができるのが寡婦年金です。

老齢基礎年金を繰り上げ請求すると、将来この寡婦年金を受け取ることはできません。

③ 付加年金との関係
国民年金の保険料に付加保険料を上乗せして納めていた人が、老齢基礎年金に上乗せして受け取ることができるのが付加年金です。

付加年金についても繰り上げ受給をすることができますが、その場合は老齢基礎年金と同じ率で減額されます。

老齢基礎年金と付加年金をあわせて繰り上げると、その両方が「繰り上げた分だけ一生減額される」という形になります。

このように、繰り上げを選ぶと、「今の老齢基礎年金と老齢厚生年金がいくらになるか」だけでなく、本来であれば将来受け取れていたかもしれない年金(障害基礎年金や寡婦年金)や、付加年金の金額にも影響が出てくることがあります。

すべての方に当てはまるわけではありませんが、「もし障害状態になったときにどうなるか」や、「ご夫婦のどちらかが亡くなったときの遺族の年金はどうか」といった場面も含めて、繰り上げがどんな影響を持つのかを、少し頭の片隅に置いておいていただければと思います。


今回お伝えしたかったこと

ここまでが、「繰り上げ」という制度そのものについての、基本的な整理です。

  • 繰り上げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を、両方同時に前倒しする制度であること
  • 一度繰り上げると、そのときに決まった減額が一生続くこと
  • 60歳から65歳までの間で、受け取り開始の月を選べること
  • 減額率は「1か月あたり0.4%」で、繰り上げた月数に応じて本来の年金額から減額されること
  • 障害基礎年金・寡婦年金・付加年金といった「将来の可能性のある年金」にも影響が出ること

こうした制度面のポイントを押さえたうえで、あらためて「自分にとって繰り上げという選択肢をどう考えるか」を見ていくと、情報に振り回されにくくなります。


前回の記事とあわせて読んでいただくことで、「損か得か」だけではなく、「自分の暮らし方や生き方のイメージとあわせて考える」という視点も、少しずつ持っていただけたらうれしく思います。


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